【沖縄の怖い話】線香のにおい

微かに香る線香のニオイ

ランプB
 

死のニオイを感じとれる人がいると言ったら信じるだろうか。

この話をした本人は、気のせいかもしれないし、偶然かもしれないと言っていたが、私の感想としては偶然ではない…と思う。

– 初体験 –

初めて経験したのは職場だ。
パソコンを使って作業していると、線香のニオイがしてきた。
職場で線香のニオイがするなんて珍しいなと思いながらも仕事を続けていた。
漂うニオイを嗅いでいると、少し変わった点があることに気づいた。
線香のニオイは、火をつけたときのように、ハッキリとしたものではなく、服についているような細い香りで、今にも消えそうなものだった。
そのため、社員の誰かが自宅で線香を使ったときの移り香で、すぐにニオイはなくなるだろうと思った。
しかし、しばらく経っても線香のニオイは消えずに漂っている――。
これはいくらなんでもほかの人も不思議に感じているだろうと思い、反応を見るため、顔を上げて周りを見回すと、みんな無反応だった。
とても微かなニオイだったので、やっぱり自分の勘違いか…と片付けて仕事に戻ったが、ニオイは消えない。
あまりにも不思議だったので、思い切って隣の席にいた社員に線香のニオイがしなかったか尋ねてみた。
すると、変な顔をして線香のニオイなんてしないと答えが返ってきた。
このやりとりから、会社で線香のニオイはあり得ない、やっぱり自分の気のせいと結論づけ、そのまま仕事を続けた。
このときはこれだけだった。

– 数年後 –

次に経験をしたのは、初体験から何年も経ってからだ。
このときも仕事中で、前回とまったく同じことが起きた。
仕事をしていると、また微かに線香のニオイが漂ってきた。
前回は「気のせい」と片付けていたので、再び起きた現象に驚いて周りの反応を見てみたが、やっぱりほかの人は無反応だった。
二度目だったので、どうやら自分以外には気づかないモノらしい…と割り切り、仕事を続けた。
線香の香りは、しばらく漂っていたが、仕事に集中しているうちに気にならなくなり、気がつくといつの間にかニオイは消えていた。
このニオイがあった日から約一週間後に、上司の家族が亡くなったと聞かされた。

– あることに気付く –

また、線香のニオイがした。これで三度目だ。
友人と話をしていると、微かに線香のニオイがし始めた。
もう三度目だったので驚くことはなかったが、なぜほかの人には匂わないのだろう…と思いながらも、あまり深く考えずに会話を続け、その日はそのまま別れた。
後日、友人の家族が病気で倒れ、数か月後に亡くなった。

この三度目の経験から、線香のニオイは人の死と関係するかも…と考えるようになった。
理由は2つあって、一つは、微かに香る線香のニオイは、葬儀に参加したときに嗅いだことのあるニオイで、香りがしたときは葬式を連想すること。
もう一つは、線香のニオイがした後は、誰かが亡くなるという共通点があったこと。
単なる偶然かもしれないが、あり得ないところで線香のニオイがする場合は、なにかトクベツなものなのかもしれない。


この話を聞いた後、同じような事例がないか、インターネットなどで調べてみた。

すると、似たような体験談を書いた記事もあり、線香に関しては今回の話のように「死」を意味すると解釈しているものが多く、「死後に訪れてきた」という説や、「『虫の知らせ』のような死の予兆」という説も見かけた。

ほかにも「花のような匂い」「腐ったものの匂い」など、周囲の人には匂わないモノを感じ取っている人もいるらしいと知った。

一人の人が言っても虚言にしか思えないが、複数の人が似たような話をしている点が興味深いと印象に残った話だった。

ちなみに、この話をした人だが、線香のニオイが頻繁にするわけではなく、ふいに発生する現象とのこと。

毎日不可解な現象に悩まされるわけではないので、「やっぱり気のせいだったかも」と流している。

それでも数回同じようなことが起きれば偶然とは思えないのは私だけだろうか?