魔除け「石敢當」について【沖縄の民俗学】

魔物が屋敷に入って来るのを防ぐ魔除け「石敢當」

石敢當
石敢當のある風景

沖縄の魔除けとして、有名なものにシーサーがある。

シーサーは、門の上に置かれていたり、家の屋根の上に設置されていたりするが、屋敷へ入ってくる魔物を払う役目を持っている。

ほかに身近なものとして「石敢當いしがんとう」があるが、こちらも沖縄ではよく目にする魔除けのひとつだ。

石柱タイプと表札タイプの石敢當

石敢當
石敢當のある風景

石敢當はシーサーと同じように、屋敷へ入ってくる災いを防ぐための魔除けで、家の外、たとえば屋敷を囲む塀などに設置される。

T字路の突き当たりにある屋敷や辻、三叉路になっている場所へ行くと石敢當に会う確率は高い。

石敢當は表札のように長方形の石に「石敢當」と書いて、塀などに設置しているタイプが多いが、たまに石柱も見かけた。

石敢當を設置する理由については――

「ムン(魔物など)は、道を曲がるのがニガテで直進しかできない。そのため突き当たりとなる屋敷はムンが入りやすい。ムンが来ると災いが起こるので、ムンが侵入しないように屋敷の前に魔除けの石敢當を置いておく。ムンは石敢當に当たると、はね返されて屋敷には入ってこれない」

――と、わが家では聞かされている。

図解してみた。

【例】T字路の突き当たりにある屋敷

石敢當の説明イラスト
T字路の突き当たりにある屋敷と石敢當

上のイラストように、T字路の突き当たりにある屋敷の塀には、石敢當を設置していることが多い。

【ケース1】石敢當がない場合

― 1 ―
石敢當を設置していないT字路の屋敷の場合。
ムン(魔物)は、道に沿ってまっすぐ進んでくる。

石敢當の説明イラスト
石敢當なしの屋敷と魔物①

― 2 ―
ムンは曲がることが苦手で、そのまま突き当たりの壁(塀)にぶつかってしまう。

石敢當の説明イラスト
石敢當なしの屋敷と魔物②

― 3 ―
行く手に障害物があると、ムンは壁を越える、または通り抜けて屋敷へ侵入してくる。

石敢當の説明イラスト
石敢當なしの屋敷と魔物③

家の中へ入ってきたムンは、厄災をもたらすといわれている。

【ケース2】石敢當がある場合

― 1 ―
次は、屋敷を囲む塀に石敢當を設置している場合。
ケース1と同じ条件で、ムンがまっすぐやって来る。

石敢當の説明イラスト
石敢當を設置した屋敷と魔物①

― 2 ―
ムンは曲がるのが苦手なので、ここでもケース1のように壁に向かって直進してくる。

石敢當の説明イラスト
石敢當を設置した屋敷と魔物②

― 3 ―
ところが!
この屋敷の塀には石敢當があるため、ムンはぶつかる直前で跳ね返されてしまう。

石敢當の説明イラスト
石敢當を設置した屋敷と魔物③

弾き返されたムンは、石敢當があるため進むことができず方向を変えて去っていく(または石敢當に当たるとムンは飛び散ってしまうとも言われている)。


沖縄ではムン(魔物)が屋敷に入り込むと、家人にさまざまな災いをもたらすと言われ恐れられている。

そのため石敢當やシーサーなどの魔除けを置いて、ムンが侵入してこないように対策をとる風習がある。

石敢當のみだと独特の文化に思えるが、護符(お札)が石敢當と似たような役割をもっている。

共通点からみると、日本のあちこちで同じような風習があり、同じ文化圏に属していることがわかって興味深い。

沖縄ではシーサーや石敢當というカタチをしているが、魔除けとして使われている道具は、住んでいる土地の気候や環境に合った形で引き継がれているように思える。

もしかしたら地元の人以外は見たことがない形態をした魔除けが、日本のあちこちに存在しているかもしれない。