【沖縄の怖い話】葬式の後

葬式後の不思議な出来事

サトウキビ畑
 

幼少の体験なので、細かいことは覚えていない。
でも、親に叱られたことがショックで大人になっても記憶に残っている不思議な出来事がある。

子どものときに隣家で葬式があった。

田舎だったので当時は自宅で葬儀を行なっていたが、私は幼かったため親が式に参列させなかった。
朝から大人たちが忙しくしていたので、何かあったことには気づいていたが、あとで隣り家族のお兄さんが亡くなったと聞かされた。

翌日、隣りの家に住む友人(弟)がいつものように家へ遊びに来た。

普段は一緒に庭で遊ぶのだが、この日はなぜかお墓に行きたがり、一緒に行こうと誘ってきた。
お墓は死んだ人が行く場所と聞いていて、私は幼いながらも怖いところだと感じていたため、気のりせず断った。
しかし友人はどうしても行きたがり、しまいには一人で行くと言い出して、本当に一人で出発し始めた。
私はいつもと様子が違う友人が心配になり、仕方なく一緒に行くことになった。

友人は迷いなくスタスタとお墓へ向かう。

私はどこにお墓があるのか知らなかったので、友人の後ろをただついていった。
住宅地を抜けて農道へ入り、周りはどんどん畑だけになっていく。
初めて歩く土地なので少し不安を覚えた。
さらに道を進んでいくと、畑の向こうに丘になったところが見えてきた。
すると、友人が「あそこがお墓だよ」と丘を指さして言った。

お墓へ近づくにつれて不安感が増していく。

私は「嫌だな…」と思いながらも歩を進めていたが、突然一緒に連れていた犬が猛烈に吠え始めた。
驚いて振り返ると、犬はサトウキビ畑に向かって吠えている。
農作業をしている人に対して吠えたと思い、畑のなかを見渡したが人影は見えない。
サトウキビが茂っているから見えないだけかもしれない。
もしそうなら、迷惑なので犬を叱ってみたが、いっこうに吠えるのを止めない。
警戒した声で激しく吠え続けているのを見ているうちに、何か変だ!!――と急に感じた。

そう思った途端に恐怖がわいてきた。――この先は危ない!!

お墓へ向かう足を止め「帰る!」と言って、私は急いで来た道を引き返した。
私の豹変に友人は面食らっていたが、それでもお墓へ行きたがり、何度も誘ってきた。
私は「絶対行かない。帰る」と言い切り、振り返らず帰路を急いだ。
友人はためらっていたが、しぶしぶ一緒に家へ帰った。

夕食時に、親にお墓へ行きそうになったことを話した。

驚いたあと、母は「子どもだけで行く場所じゃない」と叱った。
この日の出来事は恐怖体験と叱られたことで、嫌な思い出として私の記憶に残った。


あとで知ったことだが、死んだばかりの人は、一人であの世へ行くのが不安で寂しいので、一緒に行ってくれる人を呼ぶことがあるという。

あの時、お墓へ行く途中で犬が吠えず、そのままお墓へ着いてしまっていたら、私たちはどうなっていただろう…

思い出すたびに吠えてくれた犬に感謝している。