パワースポットなの?沖縄の「御嶽」って何?【沖縄の民俗学】

パワースポットといわれる沖縄の聖地

浜川御嶽
沖縄にある聖地

「沖縄の御嶽はパワースポットだ」と言って訪れる人を見かけるようになった。

パワースポットという単語を調べてみると、人を癒す場所・不思議な力が得られる場所などいろんな意味があるようだ。

そういう不思議な力を求めて来訪者が多いようだが、そもそも沖縄にある御嶽ってなに?と疑問がわいたので自分なりに調べてみた。

御嶽とは

御嶽ウタキというと独特に聞こえるが一般だと「聖地」を指す。

聖地はむかしのムラ単位を基本として設けているため、沖縄のいたるところに御嶽を見かける。
ムラはもともと血族から成り立っていたが、次第に周囲のムラとまとまるなどして大きな集落になっていった。
この流れから現在では御嶽の管理は市町村で行っているところが多い。

おおもとは精霊信仰と祖先崇拝

聖地はいろんなモノに霊魂がいると考える「精霊信仰」がおおもとになっている。
科学が発展していない時代は、解明できない不思議な現象は霊的な存在があるからだととらえて信仰していた。
この精霊信仰は日本だけでなく、世界のあちこちで同じような考えをもっていたというから興味深い。

また「祖先崇拝」も聖地と結びついていて、亡くなった人の魂は身近に存在していて、いずれは神となり子孫を守ってくれると考えから先祖を崇拝している。

  • 精霊信仰…アニミズムともいう。

御嶽の性質

聖地は大きく分けると二つあるようで、ひとつはムラ全体、もうひとつは一族だけが崇拝する場所だ。

狩猟時代や農耕時代は共同生活を行っていたのでムラ単位で同じムラの神様を拝んでいた。

一族のみが拝む聖地は、その一族の先祖に関わる場所となっているため一族以外の人たちは拝むことはない。

あと沖縄の人たちが共通で拝むような聖地もある。
沖縄を創った神様の伝説が残る場所が聖地となっていて、とらえかたは先祖崇拝と似ているかもしれない。

  • 沖縄を創った神様の伝説
    日本神話のように、神が降りてきて琉球を創ったという「琉球神話」が沖縄にはある。

御嶽の役割

共同で拝むような聖地は神の来臨する場所といわれ、森が聖地となっていることが多い。
聖地には神座となる自然石などがあり、そこへ神が降りてくると言われている。
ここで神を迎えて、収穫の感謝やムラの繁栄祈願などの祭りが始まる。

先祖を祀る聖地の場合は、先祖の眠るお墓が聖地となっていたり、先祖の居住跡などゆかりのある場所が聖地となっていたりもする。

現在では社を設けている聖地もあり、社のサイズは様々だ。
また社がなくても聖地には石や香炉が置かれているからすぐにわかるが、神社などのように常に管理する人がいるわけではないので、雑木林の中にあったりすると埋もれて探せない場合もある。

  • 神座しんざ…ここでは、神が降りてくる場所を指す。

御嶽の構造

森などが聖地となっていることが多く、門があり石垣で囲むような形をとっている場所もある。
聖地の中心となる部分には自然石など神座があり、そこへ神が降りてくるという。

むかしは聖地の中心は祭事を行う巫女しか入れず、男性は立入禁止となっていた。
そして神聖な場所であるため祭事など特別なときにしか使われず、ふだんは立入禁止で木を切ることも許されなかったという。
もし禁を破ると神罰が下り病気になるといわれ、禁を犯した者は巫女に頼んで謝罪しなければならないとされていた。

  • 巫女…ここでは、ノロを指す。
  • ノロ…ムラの祭祀などを行う女性の神官。
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日本共通の信仰

御嶽信仰は沖縄独自のものかと思っていたが調べてみるとそうではなく、日本共通の信仰のようだ。

まず聖地は森になっている場所が多く、やはり神が降臨する場所とされている。
現在は立派な社殿があったりするが、かつては祭事など神が降りてくる時期に仮の社殿を設け、祭事が終われば取り壊したらしい。
聖地はふだんも聖域とされていて、立ち入ったり草を刈ったりしてはいけないなど禁忌があるのも沖縄と変わらないようだ。

御嶽との関わり方

御嶽はパワースポットといわれて知名度が上がってきているようだが、自分が住んでいる地域の御嶽は知っていても、ほかの場所の御嶽は存在すら知らないという人は多い。
また沖縄では御嶽よりも「火の神信仰」のほうが強く、台所などに火の神を祀っていて、ふだんは火の神を拝んでいる。

「沖縄の人たちは御嶽へ行くのか?」と聞かれたら、私の場合はめったに行かないと答える。
行かない理由は用がないこと、それに御嶽へはむやみに近づくなと言われたことがあるからだ。
「近づくな」の理由には、むかしからの習わしで清浄な場所という意味が大きいと思うが、御嶽のある場所は雑草などが茂っていたりするため、毒蛇ハブに咬まれることを恐れての忠告も含まれているように思える。

御嶽への関わり方は個人差があるが、御嶽信仰は今でも残っていて御嶽めぐりをする人がいたり、御嶽の前で拝んでいる人たちの姿は日常風景に溶け込んでいる。
御嶽はパワースポット的な要素もあると思うが、沖縄で生活していると神様や先祖に向かって感謝の祈りをする場所という考え方が強いように思える。
そのため御嶽へ訪れる場合は襟を正して行くようにしている。

  • 火の神ヒヌカン…カマドの神様。火の神様。
  • ハブ…沖縄に生息する毒蛇。
    失血毒のため咬まれると腫れや痛みがある。早めの治療が必要で、咬まれた部位によっては死亡することもあるから注意が必要。
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