魔物に追われたらトイレへ逃げろ【沖縄の民俗学】
現在、日本は水洗トイレとなっているが、水洗トイレが普及する前までは、汲み取り式便所だった。
生活水準が上がるにつれてトイレも進化してきたが、トイレの歴史を調べてみると知らなかった事実が出てきて面白い。
今回は沖縄のトイレの歴史と民話を紹介していく。
畜舎兼トイレ「フール」
むかしの沖縄では、生活のために各家庭で家畜を飼っていたという。
家庭よって家畜は異なるが、牛や馬、豚にヤギ、ニワトリやガチョウなどだ。
家畜は農業の手伝いから卵や肉としての食料など、自給自足が基本だった時代には欠かせない存在だった。
その中でも豚は身近で、戦前まで豚舎がトイレと兼用していた時代もあった。
水洗トイレが普及してから畜舎兼トイレは使用されなくなったが、畜舎兼トイレは「フール」と呼ばれていた。
石造りのフール
水洗トイレが普及してから、使わなくなったフールは取り壊されてなくなったものが多い。
現在残っているフールは、民俗史料として保全されたものでかなりレアだ。
現物ではなく資料としてフールを見たいのなら、南風原町にある南風原文化センターがおすすめだ。
文化センターでは、戦前まであったフールを再現していて、仕組みを知るのに便利な歴史資料となっている。
フールを簡単に説明すると、基本は石造りの豚舎だ。
豚が逃げないよう石で囲んで豚舎を作り、豚舎内に排泄物が落ちる仕組みの穴が設けられている。
穴のサイズは豚が逃げないくらいの大きさで、この穴がトイレとなり、むかしの人々はここで用を足していた。
豚舎の近くにはユウナの木を植え、木の葉をトイレットペーパー代わりに使っていたという。
フールには神様がいて、たくさんいる神の中でも最も強い力を持つと沖縄ではいわれている。
フールの神様(トイレの神様)
フールには強い魔除けの神様がいると信じられている。
そのため魔物に追いかけられたときには、フールへ逃げこめといわれているくらいだった。
今は水洗トイレとなったため、フールは使われなくなったが、現在でもトイレには強い魔除けの神様がいるという信仰が残っていたりする。
しかし、次第に民話が語り継がれていくことが減っているので、フールの神様のことを知らない人もいるだろう。
だんだんと消えつつある沖縄の歴史を残しておこうと考えて、今回フールを紹介した。