霊魂には「生霊」と「死霊」がある【沖縄の民俗学】

沖縄の霊魂に関する考え方 その2

~琉球おきなわ民俗学(わが家での場合)~

別の記事で「沖縄の霊魂に関する考え方」の基本的なことを書いたが、今回は霊魂(=マブイ)について、もう少し詳しく書いてみた。

イチマブイとシニマブイ

日本でよく聞く怖い話の類では、幽霊が祟ってでてくることが多い。

その幽霊は、突然現れたと思ったら煙のように消えた…など、物体(肉体)のない霊魂の状態が基本としてあり、これは沖縄でも同じような考え方だ。

「霊魂」にフォーカスをあてると、まず沖縄では魂のことを方言で「マブイ」という。

このマブイは二通りに分けて考えられていて、生きている人の魂は「イチマブイ(=生霊)」、そして死者の魂は「シニマブイ(=死霊)」と区別している。

「生霊」は、他人への嫉妬や恨みなどの気持ちが強すぎて、生きている本人の身体から離れてしまった霊魂ととらえている。

「死霊」は、人が亡くなってしまった後に成仏できず、この世にとどまっている霊魂を指している。

この「生霊」と「死霊」という考え方は、沖縄県以外の怪談話でも聞いたことがあるので、日本共通のようだ。

そして、人が死んだ後についてだが、次のように考えられている。

人は死んだ後、自分のご先祖が迎えに来て一緒にあの世へ旅立つらしい。

しかし、亡くなった人に心残りがあったりすると、魂がこの世に残ってしまうことがあり、これがいわゆる幽霊などになって、さまよってしまうといわれている。

さまよっている霊はちゃんと成仏できず、人にいたずらしたり、祟りを起こしたりするため、悪霊や邪霊などといわれて、怖がられたり避けられたりしている。

この死霊が祟ったりする話も、沖縄以外の怪談で聞いたことがあるので、これも日本共通の考え方のようである。

マブイ

沖縄では独特の考え方があるのかと思っていたが、民俗学関連の本で調べたり、人から話を聞いたりしても、霊魂や幽霊などに対しては、共通したとらえかたが多かったのは意外だった。

今回とりあげた「霊魂」については、他県と似たような考えだが、沖縄ではそのほかに不思議な存在として「ムン」や「妖怪」(または妖精)の伝承があるが、それは別の記事で紹介する。

沖縄の方言

イチマブイ…生霊。

シニマブイ…死霊。

マブイ…霊魂。