【沖縄の怖い話】引っ張るもの

ランプB
 

沖縄では昔から奇妙な出来事が多かったようで、民話として語り継がれている不思議な話をあちこちで聞く。

では現在は奇譚はなくなったのかと思いきや、まだまだ健在で、「こんなことがあったんだって」と不思議な話はどんどん増えていく。

妙な出来事をあまり変と思っていない沖縄、そこが一番変わっていると思うのは私だけではないはずだ。

ほかの地域ではなかなか聞けない奇妙な話を聞いたのでここで紹介、タイトルは「引っ張られる」とでもしようか。

正体の見えない「呼ぶ」もの、「引っ張る」もの

怪談などで「生者が死者に呼ばれる」という言葉を聞く。

例えば、親族が亡くなった後、幾日もしないうちに近親者が亡くなると「(亡くなった人が)一人であの世へ行くのが寂しかったから、呼んだのかもね」と、葬儀のときに聞く――という話は、日本各地で言われることではないだろうか。

沖縄でも同様なことは言われているが、これ以外に死者が呼んだのではなく、得体の知れないナニか(方言では「ムン」と呼ぶ)が、本人の気づかぬうちに引っ張っているという、おっかない話もある。

この恐ろしい現象を「ムンにもたれた」と表現し、「夜中に突然姿を消し、村中で探したら洞窟の中で半狂乱の状態で見つかった」とか「自宅にいたはずなのに、気づいたら別の場所にいて記憶がない」など、眉唾ものの民話が残っている。

これだけでも怖いのに、さらにびっくりする話もある。

那覇市内での体験談「引っ張るもの」

那覇市の国際通りで買い物を終えたAさん、国際通りから国道58号線方向へ行くため、大きな通りではなく、小道を使うことにした。
国際通りと58号線は平行するように道路が走っており、間にある路地を抜けたほうが近道だからだ。
Aさんは小道に入り、建物が立ち並ぶ道を進んでいく。
ある場所に差しかかったところで、Aさんはふいに左手首を後ろから引っ張られた。
つかまれた感触からどうやら子どものようだ。
道に迷った子どもかな、と思い、立ち止まって振り返ってみたが誰もいない。
おや、からかわれたのかな?
Aさんは子どもがいたずらをして、物陰に隠れたと考え、子どもが隠れそうな場所はないかと、辺りを見回してみた。
しかし周りは建物だけで、子どもが身を隠せそうなところはどこにもない。
不思議に思いながらも、しばらく子どもを探していたが、どこにも姿がないことから次第にアレは生身のモノではないことに気づいた。
Aさんは急いで来た道を引き返し、遠回りにはなるが、車や人通りの多い国際通りへ戻り、そこから58号線へ続く大通り使って目的地へ向かった――

後日談はないが、沖縄ではヒト形のナニかを見たとか、ナニか得体のしれないモノを見たという話はわりとある。

沖縄戦で多くの人が亡くなり、遺骨を見つけてほしくて人に知らせていると言うおばぁがいたり、事件や事故があったいわく付きの場所で無念の思いを人に伝えているなど、いろんな解釈がある。

真相は不明だが、何も知らずに通りかかっただけの当事者にとっては、いきなり怪事件発生なので、かなりパニックになるはずだ。

南国の沖縄、暑いはずだけどまれにヒヤッとする不思議な話が現在でも生々しく語られている土地だ。