今でも旧暦の行事が大事にされる沖縄
今の沖縄は年末年始の過ごし方は他県と変わらない家庭がほとんどだと思う。
年末に庭や家の大掃除を始めてきれいにし新年を迎え、元旦に神社へ初詣へ行く人もいればテレビを見ながら家で過ごす人もいる。
ただ一族のトートーメー(位牌)を引き継いでいる長男家系の場合は、親族が年始の挨拶に来るので客を迎える準備があって忙しい。
訪問者は仏壇にあるトートーメーに新年の挨拶をした後、正月料理を食べながら皆と歓談する。
最近は長居する人は少ないそうだが、昔は集まってきた人たちの話で盛り上がり、まるで宴会だったという。
現在だとあまり想像できない光景でピンとこないが、年末年始の沖縄の風習を調べてみたので紹介していく。
- トートーメー…位牌を指すが位牌は先祖そのものと考えられている。
※ 注意 ※
現在は新暦を使っているが昔は旧暦で生活していた。ここから先は旧暦を前提にしている。
27日または28日頃
正月が近くなった27日または28日頃、年迎えの準備をする。
各家庭でブタを1頭つぶして正月を迎える準備に入り、正月料理用に使ってあまった肉は塩漬けにして保存しておいた。
大晦日
大晦日は「トゥシヌユル」といい、農具類を洗って土間に並べ、ニラを供えて年を越した。
一月(睦月)
一日
早朝に
お盆を用意してウカリー(三色の紙)を敷き、その上に昆布・炭・ミカンを置いて
正月は豚料理がメインで家で過ごすが、トートーメーを祀る親族の家へ年始挨拶へ行く。
- 火の神…台所に祀られている家の神。家族の加護を願って主婦が祀る。
- 若水…正月の早朝に初めて汲む水で活力再生の力があるとされる。男性がムラの共同井戸から水を汲んでくる。
- ウカリー…赤・白・黄の三色の紙で、カリーカビやイルカビとも呼ばれている。
二~十三日
自分の干支と同じ干支になる年を生まれ年といい、13歳、25歳、37歳、49歳、61歳、73歳、85歳、97歳の人が生まれ年の干支の日を祝う。
もともと生まれ年は厄年という考えがあり、災難を無事に切り抜けられるように御願し、生まれ年は忌み慎むことを心がける。
一年間は家の新築や結婚式などの祝い事はなるべく避けるようにする。
三日または五日
仕事始め。午前中に畑へ行き少しだけ働き仕事始めをした。
七日
十三日
- ムーチー…月桃やクバの葉でモチを包み、健康祈願をしながら仏壇などに供える。那覇市の首里にはムーチーにまつわる民話もある。
十四日
小正月。塩漬けの豚肉を食したり豚骨汁をつくる。
十六日
この日は
餅をつめた重箱に肉や豆腐などをつめた重箱を持って墓参りをする。
昨年死者の出た家庭ではその霊を慰めるためにとくに丁重にお祀りをする。
十八日
十八夜。御観音拝み
二十日
二十九日
火の神や屋敷神に一年間の祈願に対して感謝をささげ、いったん祈願を解く。
二十九日頃
屋敷の
屋敷の神に一年間守っていただいた感謝の拝みをする。
屋敷の御願は家を守ってくれる神様に対して行う。
前年守ってくれたことに感謝し、いったん願い下げをして再度お願いする形をとるが、新年の御願は旧暦の二月に行う。
以上が旧暦一月の沖縄行事だ。
生活環境が昔とはだいぶ変わっているため、家庭によっては行われない行事もあるかもしれない。
私が経験した生活スタイルでは以下のようになっていた。
現在の旧暦行事に対する取り組み例
旧暦の12月27日または28日
年を迎える準備にブタをつぶしていたという慣習だが、今は聞かない。
昔は各家庭でブタを飼育していて、生活の糧にしたり特別な日にブタをつぶして料理に使っていたが、現在ではスーパーなどで材料を購入する。
大晦日
昔はほとんどの家庭が農業で生計を立てていたため、農具を大事にしていたのはわかるが、なぜニラを供えたのかは調べてみたけどわからなかった。
現在は会社勤めが多く、生活スタイルも新暦に合わせているため、旧暦の大晦日はそれほど意識しないと思う。
旧暦一月一日
若水の風習は知らないが、重箱に詰められた特別な料理は今でも正月料理としてあり、トートーメーのある家ではお供えされた重箱を見かける。
わが家では重箱料理はなく、沖縄そばで年越しして鏡餅を飾っているから昔とはだいぶ変わっている。
二~十三日(生年祝い)
かなり年配の人たちを見ると「生年祝い」を重視しているが、若い人たちは一般でいわれている厄年(男性は前厄24歳・本厄25歳・後厄26歳、女性は前厄18歳・本厄19歳・後厄20歳など)は知っていても、生まれ年が厄年ということを知らない人もいる。
全体で見ると、昔の慣習が後世へ伝わっていないように感じる。
三日または五日
三日または五日に仕事始めとして畑へ行くことは、農業を行っている家庭では今でも行われているかもしれない。
しかし会社勤めの場合は、会社の年間スケジュールに沿った仕事始めとなるので大部分の人たちが意識していない行事だと思う。
七日
旧暦の七日を意識して雑炊を食べたことはないが、日本では新暦の七日に春の七草を使った七草粥を食べる風習があり、同じ意味合いなのかもしれない。
七草粥は万病を防ぐといわれているが、沖縄では春の七草は採れないので、違う材料を使った雑炊を食べることになったのかも。
十三日(鬼餅)
ムーチーは今でも行われている行事で、「作りすぎたから」と言って職場などでもらうこともある。
昔は素朴なムーチーだったと思うが、現在だと黒糖やウコン、紅芋など混ぜる材料によって色が変わり、カラフルなムーチーもあって見た目がいいものが増えた。
月桃の葉でムーチーを包むことは残っていて、独特の香りがつくため子どもの頃は少しニガテだった。
十四日(小正月)
わが家では「小正月」を意識した行事はなく、新暦のカレンダーの正月連休明けと変わらない生活を送っていた。
また、ここでの塩漬けの豚肉は郷土料理の「スーチカー」のことで、スーチカーは料理で余った豚肉を塩漬けにした保存食だった。
十六日(後生の正月)
お墓参りはしているが、それが「後生の正月」という行事とは知らなかった。
いろんな旧暦行事が消えていると思っていたけど、名称が変わっただけで今でも続いている行事があるかもしれない。
十八日
「観音拝み」はわが家では行われておらず、どんな内容なのかは不明だ。
調べてみると観音様と縁のある日のようで、おもに子どもの健康を願うようだ。
二十日(二十日正月)
新暦での生活スタイルが日常のわが家では「終わり正月」の行事はなく、今回調べてみて初めて知った。
また塩漬けの豚肉(スーチカー)だが、現在だと食卓に上がる機会はほとんどなく、家庭料理ではなく沖縄土産として購入する郷土料理だと思う。
二十九日と二十九日頃
「御願解き」と「屋敷の御願」はマンションやアパート住まいだと行っていない家庭が多く、行事自体を知らない世代もある。
行事は家人だけで行うところやユタなどを呼んで一緒に行う家庭もある。
◇
自分の経験を参考にしたり書籍などから調べてみたりもしたが、行事にどんな意味があるのかわからないものもあったので、できるだけ調べていこうと思う。